子どものやる気を引き出す! 親のアプローチ
恒例となりましたが、マネジメント・ブレイン・アソシエイツ様発行の「子供のやる気を引き出す 親のアプローチ」を転載させて頂きます。
保護者の方々にも何かの気づきの一つにして頂ければ、これに勝る幸せはございません。
出典:
マネジメント・ブレイン・アソシエイツ発行
「子供のやる気を引き出す親のアプローチ」
☆ 通信簿を話題に、いろいろな話をしよう! ☆
◇学校の通信簿が、お子さんと返ってきてお話はされましたか。この通信簿を見て、子どもに何が言えるか。今回は、これをテーマにしてみます。
◇通信簿の評価が良ければ、子どもは嬉しいし、悪ければ悲しいものです。通信簿で一喜一憂するのが、子どもです(表面的には気にしていないように見えるけれども)。また、それと同じぐらい、お母さんもお父さんも一喜一憂しているのではないでしょうか。しかし、ここが、親の踏ん張りどころなのです。通信簿を子どもと見ながら、いろいろなことを話すことです。良い評価も悪い評価も学校の先生の評価を噛み砕いて話し、お母さんやお父さんの評価も学校の先生とは別に伝え、子どもを全体的に評価してあげるようにしたいものです。
お母さん:小学校4年生の最後の通信簿は、どうだったの?
A君 :別に。こんなもんじゃない。
お母さん:見せてよ。
A君 :いいよ。はいっ。
お母さん:算数が、よく分かっているみたいね。
A君 :たまたまじゃない。
お母さん:そんなことないわ。A君は、算数頑張ってたとお母さん思うけど。
A君 :そうかな。ちょっと勉強しただけだけどね。
お母さん:A君が、頑張ったことを先生もちゃんと見ていたのね。先生のコメントに良いこと書いてあるじゃない。A君は、みんなと協力して学級発表会をやったんだ?
A君 :みんな協力してたから、僕だけじゃないよ。
お母さん:A君は、小さい頃から、みんなと協力して何かをするのが、好きだったよね。お母さんは、そういうA君の姿勢がとっても良いと思うわ。
◇通信簿を見ながら、こんな会話をしてみてはいかがでしょう。成績だけに拘らずに、良い点や悪い点を具体的に確認して、次の学年の生活目標を決めても良いし、子どもに対する親の評価を伝えても良いと思います。
兎に角、成績だけに関心を示すのではなく、子どもの生活や行動に関心を示して、通信簿を一緒に見ていくことです。お母さんやお父さんは、子どもの行動の結果以上に、行動そのもの、つまりプロセスに注目した方が良いのです。良い結果を作るのは、良い原因だからです。子どものうちは、結果よりもその結果を出したプロセスに注目するようにしてください。
『通信簿を子どもと一緒に見て、いろいろな話をする!』
☆ 受容することで関係が変わる!☆
◇20数年前、学習塾に勤めている時に、こんな出来事がありました。黒くて普通の髪型だった中学3年生の女生徒が、金髪にして塾にやってきたのです。
◇驚いたのは、その日の授業を受け持つ教師です。「なんだ!?この生徒は」と思ったのでしょう。彼女を見るなり、「なんだ!その髪の毛は!家に帰って黒くして来い!」と怒鳴って、その生徒を帰そうとしました。ちょうど隣の教室で授業をしていた私は、その騒ぎを聞きつけて、その生徒を預かったのです。受け持ちのクラスには、問題演習をさせて、その生徒と話をしました。
中土井:どうしたんだ、その髪の毛?
Aさん:え~?・・・・。
中土井:この前は、普通の髪の毛の色だったじゃないか。
Aさん:そう。いつもは、この色なんだけど、これじゃまずいと思ってスプレーで塗って塾に来ていたんだ。
中土井:今日は、どうしたの?
Aさん:今日は、スプレーで塗るのが間に合わないから、塾を休むよりいいかと思って、そのまま来たんだ。
中土井:偉いじゃん!そうだよ。塾を休むより来た方がいいからな。でも、B先生は、君を見て驚いて、なめられちゃいけないと思って、叱ったんだな。Aさんも驚いただろう?急に叱られて。
Aさん:むかついた。・・・・。
中土井:そうだよな。でもB先生は、事情を知らないからな。でも、この髪、ちゃんと染め直して、黒くしなければダメだぞ。君もそう思ってるんだろ?
Aさん:まあ。
中土井:じゃあ、教室に入ろうよ。B先生に言っておくから。君の勉強したいって気持ちは分かったよ。次までには、髪の毛黒くして来いよ。
Aさん:わかった。
◇Aさんは、この一件以来、髪の毛を黒くして、塾に通い続けました。
Aさんは、何かあると私のところに来て、色々と相談するようになりました。時には厳しく、時には優しくAさんと接しましたが、Aさんにとっては、私は話の分かる先生だったのだろうと思います。
それは、Aさんの事情を聞いてあげたその日が、きっかけだったと思います。悪いと思われる状況の中でも良いことはあるものです。塾に行きたいと思って、金髪のままでも来たのですから。そのことを私たちは、汲んであげることです。そうすれば、関係はきっと以前よりも良くなるはずです。
『相手の受容するところから始める!』
☆ 話の前提を共有する! ☆
◇今回は、コミュニケーションの前提について書きたいと思います。
◇アメリカの心理学者が、コミュニケーションに関する実験をしました。どういう実験かというと、二人一組になって、一方が手で机を叩いて相手に曲名を知らせるという実験です。実験する前は、かなりの人が曲名は当たるだろうと思っていたそうですが、結果は大外れだったそうです。相手に対してただ手で机を叩くだけでは、曲名は、全く伝わらなかったのです。
◇私もこの実験を知って、数年前に子育て講演会で、参加していただいた15名のお母さん、お父さんにこの実験と同じようなことを行ってみました。まずシンプルな曲の「さくら」を机を叩いて聞かせてみました。
なんと一名のお父さんが正解でした。その他の14名の方は、全く曲名すら思いつきませんでした。続いて、スマップの「夜空ノムコウ」を叩きましたが、誰もわかりませんでした。誰からも曲名すら出てこなかったのです。そこで、今のは、スマップの曲ですとヒントを与えてみたら、数名の方が、すかさず答えを言ってくれました。
◇この実験で分かったことは、コミュニケーションを理解するためには、理解する前提なり、理解を助ける文脈が大切だということです。自分だけで思っていることは、子どもには全く分からない可能性があるのです。
ですから話をする前に、相手に話の前提を示さなくてはならないのです。
前提や文脈を、親と子どもが共有してこそ、話の理解が図れるのです。そのことを、この実験は教えているのです。頭の中に音楽が流れているからこそ、手を叩くだけで曲になっていくのです。もし、そういう音楽が頭の中に流れていなければ、手で机を叩く音と音楽が結びつかないので、曲にならないのです。
◇つまり、子どもと話す時は、子どもと前提を共有することです。子どもが理解する文脈で話をすることです。そうしなければ、スムーズなコミュニケーションは、図れないと思った方が良いのです。
『話の前提を共有する!』
☆ 長所も短所もない! ☆
◇この日曜日に、千葉県柏市で、お母さんやお父さんに子どもとのコミュニケーションについてお話をしてきました。子育ては、心のエネルギーを高めること、つまり、セルフ・エスティームを高めるようなコミュニケーションを取ること!というような内容をお話ししてきました。
◇今回は、その時に、時間の関係で話ができなかったことを少し書いてみようと思います。それは、人間の長所や短所について考え方です。
◇たとえば、元気のよい子どもと落ち着きのない子ども。どちらも特性は同じなんです。運動場で元気のよい子どもは何も問題はありません。しかし、お葬式で元気がよい子どもは、問題児になってしまうはずです。つまり、落ち着きのない子どもと言われてしまうのです。
◇どちらの子どもも元気がよいのですが、状況にその元気のよさがマッチしている場合を長所、マッチしていない場合を短所だと私たちは思うからです。つまり、状況に置ける行動の適応度によって、長所になるか短所になるかが決まるのです。ですから、長所と短所は表裏一体の関係なのです。
◇ということは、子どもが状況に適応できるような行動を取れるようにすることが、私たち親にとっては重要なことなのです。
◇子どもの短所を直そうと親が必死になるのはよくわかりますが、実は、子どもの短所を直そうとすればするほど、本来子どもが持っている長所が失われてしまう可能性が多いということなのです。つまり、元気のよさがどんどん失われてしまうかもしれないのです。状況に応じた行動を促すことが大切な所以です。
◇そのためには、状況に適応した行動を取った時に子どもを承認していくことなのです。つまり、当たり前に出来ていることを承認していくことなのです。状況に適った子どもの行動に親の関心が向けられるようになれば、子どもは自ずと状況適応をするようになります。結果、短所よりも長所が目立つようになるのです。
『状況に適った子どもの行動を承認しよう!』